祈りについて

  祈りについて「私に啓示された福音」第八巻(上)(出版社 天使館)より抜粋
                       「聖福音書」バルバロ訳 1960年発行

 「ラビ、わたしたちには娘がいました。います。まだいます・・・娘を儀礼どおりに、ある若者と結婚させました。共通の友人から、良い男だと勧められたので。六年前に結婚して、二人の子をもうけました。たった二人・・・ 夫の愛が消えてしまったからです。挙句の果てに、今は離婚を望んでいます。娘は泣いてばかりで、悲しい日々を送っています。 娘はまだいますが、もうすぐ、失望のあまり死んでしまうでしょう。 夫を思いとどまらせようと、手を尽くしました。 いと高き方に、一生懸命祈りました。 でも、願いは聞き届けられず・・・ここへ巡礼に来たのは、まさにそのためです。もう一か月間、ここで祈っています。 毎日、神殿に来て、わたしはわたしの場所で、妻は妻の場所で・・・今朝、娘の召使が知らせに来ました。 娘の夫がカイザリアへ出発したと。離婚命令を娘に送りつけるために。わたしたちの祈りへの返事がこれでした・・・」。
 「私が言います。 あなた方に、この悲しみを与えるのは神ではなく、人間です。神は、あなた方と、娘さんの夫を試されています。 あなた方の信仰を守りなさい、そうすれば、主はあなた方の願いを聞いてくださるでしょう」。
「もう遅いです。 娘はもう縁を切られ、恥じて、死んでしまうでしょう・・・」と、男は言う。
「いと高き方に、遅過ぎはありません。絶えざる祈りがあれば、瞬時に出来事の行く末を変えることができます。 カップの飲み物を口に近づける間にも、短剣で刺されて死ぬかもしれません。しかも、神の介入があれば。 わたしは言います、祈りの場所へ戻り、今日、明日、明後日まで、祈り続けなさい。信仰を保つことができれば、奇蹟を見るでしょう」。
「ラビ、わたしたちを慰めようとしてくださるのですね・・・でも、もう無理です、ご存じでしょう、離縁状が手渡されてしまったら、取り消すことはできません」と、男は言い張る。
「わたしは、信仰を持ちなさいと言っています。 確かに、離縁状を無効にすることはできません。でも、娘がもう受け取ったと、知っているのですか?」。
「ドラからカイザリアまでは、それほど遠くありません。召使がここに来るまでに、ヤコッベは家に戻って、マリアを追い出しているに違いありません」。
「確かに、大した距離ではありません。 でも、本当に、着いたでしょうか? 人間の意志にまさる意志が、人間を止めたことは、あり得ませんか? ヨシュアは神の助けによって、太陽を止めたでしょう? あなたが善い目的のために、絶えず祈るならば、聖なる意志が、人間の悪い意志を妨害したかもしれません。神は、 愚かな男の旅を妨げて、あなたを助けるのではないですか? あなたは、父である神にとって善いことを願っているのですから。そして、もしも人間が歩き続けたとしても、あなたが父に正しいことを願い続けるなら、果たして到着できるでしょうか? あなたに言います、今日、明日、そして、明後日と、祈りなさい。そうすれば、奇蹟を見るでしょう」。

  「またイエズスは、失望せずにいつも祈れと彼らに教えて、たとえをお話しになった、ある町に、神をおそれず、人を人とも思わない一人の裁判官があった。その町にまた一人のやもめがいて、その裁判官に、”私の敵手(あいて)にたいして、正邪をつけて下さい"とたのみにきていた。かれは、久しい間、その願いをききれなかったが、とうとうこう考えた、"私は、神もおそれず、人を人とも思わないが、あのやもめはわずらわしいから、さばいてやろう、そうすればもうかの女がわずらわしにくることはあるまい!」。主は、『不正な裁判官のいったことをきいたか。神が、よるひる御自分に向ってぶ選ばれた人々のために、正邪をおさばきにならぬことがあろうか、その日をおくれさすであろうか。私はいう、神は、すみやかに正邪をさばいて下さるだろう。とはいえ、人の子が来るとき、地上に信仰を見出すだろうか・・・・・・』とおおせられた」。(ルカ18・1~8)

  「不正な裁判官の言うことを聞いたでしょう、 『あのやもめは煩わしいから、裁いてやることにしよう』と。 不正な人間でさえ、そうなのですから、善い父である神が、 悪い裁判官に劣ることがあるでしょうか? 昼となく、夜となく、ご自分に叫び求める選ばれた子らのために、 裁きを行わずにおかれることがあるでしょうか。 恵みを求める失意の魂が祈り求めるのを、長い間放っておかれることがあるでしょうか? あなた方に言っておきます。神は速やかに裁いてくださって、彼らが信仰を失わないようにしてくださいます。 でも、祈り方を知っている必要もあります。 最初に祈った後も、飽くことなく、よいものを求め続けなさい。 そして、 『あなたの英知が、 わたしたちのためになると判断なさるように、してください』と言って、神に信頼することも必要です。信仰をもちなさい。 祈りと、あなた方の父である神を信じて祈りなさい。そうすれば、神はあなた方を抑圧する者たちを裁いてくださるでしょう。 相手が人間であれ、 悪魔であれ、病であれ、厄災であれ。絶え間ない祈りは、天を開きます。 そして、祈りの答何であろうと、信仰はその魂を救います。さあ、行きましょう!」。